第13回 医療情報講演会

第13回 医療情報講演会は終了しました。


  見えにくい見えない人のための

第13回 医療情報講演会

【日時】 平成28年10月16日(日)午後1時〜3時
【場所】 石川県勤労者福祉文化会館
     (フレンドパーク石川)2階ホール
      石川県金沢市西念3丁目3番5号
【参加方法】 直接会場にお越しください
【参加費】 無料
【講演】 「岡山大学方式人工網膜OURePの医師主導治験に向けて」
      〜治験責任者と治験機器提供者からの紹介〜

【講師】 岡山大学大学院医歯薬学総合研究科眼科学 准教授 松尾俊彦先生
     岡山大学大学院自然科学研究科高分子材料学 准教授 内田哲也先生

【主催】網膜色素変性症の患者と家族の会石川県支部
【共催】石川県難病相談・支援センター 特定非営利活動法人 ぴあサポート
【後援】石川県・金沢市

★【研究内容】★
岡山大学方式人工網膜OUReP?:
 網膜色素変性は、視細胞が徐々に死滅してゆく遺伝性疾患です。視野が次第に狭くなり、最終的には視力が低下して失明に至ります。その治療方法は残念ながら現状ではありません。視細胞の機能を人工物で代替する人工網膜が治療候補として有望で、2013年にはアメリカで初めて、人工網膜がアメリカ食品医薬品局(FDA)によって製造販売承認されました。
 このアメリカの人工網膜は、カメラで取り込んだ映像を60画素に画像処理して、その信号を顔面皮内に植込んだ受信機に伝送し、その受信機から60本の電線を出して眼球内に挿入し、網膜近傍に植込んだ60個の電極集合体(アレイ)から電流を出力します。出力電流によって網膜内に残っている神経節細胞が刺激されてその軸索である視神経を通って後頭葉に伝わり視覚を生じることを期待しています。アメリカの人工網膜によって完全失明した患者が光覚を回復することが可能となりました。
 この「カメラ撮像・電極アレイ方式の人工網膜」は、アメリカだけでなく日本も含めた世界中で開発されています。問題は、構造が複雑で植込みの手術手技が難しい、電極の小型化が難しく分解能が悪い(つまり見えない)、広い面積の網膜を刺激することができず視野が狭い、1000万円を超える高額医療機器であるなどの点です。
 私たちは、アメリカの人工網膜とは全く異なる世界初の新方式である「色素結合薄膜型」の人工網膜を2002年から医工連携で研究開発してきました。光を吸収して電位差を出力する光電変換色素分子をポリエチレン薄膜(フィルム)に化学結合した岡山大学方式の人工網膜OUReP?です。この新方式の人工網膜は、電流を出力するのではなく、光を受けて電位差を出力し、近傍の神経細胞を刺激することができます。
 「色素結合薄膜型」の人工網膜は薄くて柔らかいので、大きなサイズ(直径10mm大)のものを丸めて小さな切開創から眼球内の網膜下へ植込むことが可能です。その手術は現在すでに確立している黄斑下手術の手技で実施できます。大きなサイズ(面積)の人工網膜なので得られる視野は広く、人工網膜表面の多数の色素分子が網膜の残存神経細胞を1つずつ刺激するので、視覚の分解能も高いと見込まれます。人工網膜の原材料も安価なので、手の届く適正な価格にて供給できると考えています。

発表論文:Alamusi, Matsuo T, Hosoya O, Tsutsui KM, Uchida T. Vision maintenance and retinal apoptosis reduction in RCS rats with Okayama University-type retinal prosthesis (OUReP?) implantation. Journal of Artificial Organs, 2015; Epub ahead of print
(doi: 10.1007/s10047-015-0825-1)     岡山大学ホームページより

活動報告のページに戻る